空き家の運用、活用に困っているオーナーは全国に数多く存在します。
空き家を貸し出すにも、どこに相談したらいいか分からなかったり、
募集しても住み手がつかなかったり、
手をつけられず放置しているケースもあります。
地方自治体では空き家バンクを運営し、
貸し手と借り手のマッチングにも取り組んでいますが、
上手く行っていないのが現状です。
民間では中古買取再販がこれまでの空き家ビジネスの主流でした。
事業者が空き家を買い取り、
リフォームして販売するというビジネスモデルです。
これは空き家を手放したいオーナーにとって有用なサービスですが、
中には空き家でも手放したくないという人もいます。
今回は、そのようなオーナーをターゲットとするサービス
「アキサポ」を紹介します。
株式会社ジェクトワンが運営する
「アキサポ」がスタートしたのは2016年。
空き家所有者と空き家を利活用したい人の
マッチング事業として展開してきました。
2019年には東京都産業労働局管轄の
「起業家による空き家活用モデル事業」の事業者に採択され、
起業家支援も行っています。
昨年までは首都圏一都三県のみを事業エリアとしていましたが、
2021年からはエリアを徐々に拡大する計画です。
首都圏以外でのプロジェクト第1弾は、
京都にある京町家改修プロジェクトで、
リノベーションによって宿泊施設に生まれ変わりました。
運営元のジェクトワンは、
不動産仲介事業をメインに成長する企業の一つです。
2020年3月期の売上高は141億円。
アキサポは、年間売上高数千万円規模とまだまだ小さい事業ですが、
エリア拡大と共にニーズがさらに増えていくはずです。
リフォームで地域に求められる建物に生まれ変わる
「アキサポ」は電話やメールでの「無料相談」からスタートします。
次に、「現場調査・市場調査」ということで、
物件の所在地、現地の情報をヒアリングした後、
周辺環境や市場を調査します。そして、申込から約2~3週間後、
調査に基づき、物件活用を「提案」します。
提案内容をオーナーと協議し、双方納得の上、
転貸借を前提とした「賃貸借契約」を締結します。
そして、「改修工事」に入ります。
1~2ヶ月をかけて改修工事を行い、
同時に入居者の募集がスタートします。
入居後からオーナーへ定額の「賃料の支払い」が始まります。
空き家や滞納が発生した場合でも定額を保証しています。
「賃貸借契約終了後」は、賃料は100%オーナーの回収となり、
管理運営もオーナーに移行します。
引き続きアキサポで管理代行を行うことも可能です。
アキサポの最大の特徴は、
オーナー負担が「ゼロ円」ということです。
相続登記などで支払いが発生するケースがありますが、
これまで88%のオーナーが
ゼロ円でサービスを受けることができています。
また、相談から貸出・活用までの所要期間は、
40%が6ヶ月以内ということで、
プロジェクトの進捗が早いことも特徴です。
さらに、アキサポ事業自体の利益も確保します。
売上高は基本的に月々の家賃収入ですが、
オーナーとの賃貸借契約期間の半分の期間で、
リフォーム費用を回収できるようマネジメントしているとのことです。
2020年3月に空き家オーナーを対象に
ジェクトワンが実施したアンケート調査によると、
空き家オーナーの7割以上が、自己所有の空き家を
「活用したい」という意向があるということが判明しました。
しかしながら、活用できていない理由の最多は
「何をするにしてもお金が掛かる」が35.0%。
次いで、「活用したいがどうしたらよいかわからない(30.7%)」
「建物に価値が無さそう(23.7%)」「老朽化がひどい(23.3%)」
「リフォームしないと活用できる状況ではない(22.0%)」
という意見が並んでいます。
アキサポはこのような空き家オーナーが抱える
複数のボトルネックを解消するためのサービスと言えます。
アキサポでは、
空き家を住宅以外に用途変更するケースも少なくありません。
その中でも代表的なアキサポ事例の一つは、
かつての倉庫兼事務所を
バイクガレージにコンバージョンしたプロジェクトです。
元々視認性が悪い立地で、
店舗などの商業には向いていませんでしたが、
視認性の悪さを逆手に取ったことで利用者を獲得しました。
このように住宅以外に生まれ変わらせることで、
新たな価値を見出すことも可能です。
同社のその他のプロジェクトでは、
社宅をシェアオフィスにしたり、
空きテナントをレンタル倉庫にしたりと、
様々なコンバージョンに挑戦しています。
(情報提供:住宅産業研究所)