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「活用が進むCLTについて知る」業界ニュース

業界ニュース
2023.8.8


脱炭素化に向け、
木造中高層建築の普及が進んできています。
木造中高層建築において用いられる工法はいくつかありますが、
その中でも昨今活用が進んでいるのがCLT工法です。

そもそもCLTって何が良いの?

 CLT(Cross-Laminated-Timber)は、
ひき板を並べた層を
板の方向が直交するように重ねて接着した大判パネルで、
構造躯体に用いることで大規模な木造建築を可能とします。


CLTのメリットの1つがデザイン性です。


CLTは構造材ですが、
仕上げ材を兼ねることができ、
材の特長を活かした木目現しの空間をつくることが可能です。
また、パネルの原版から必要なサイズを切り出して用いるため、
自由な造形表現が可能で、構造物の自由度も高いです。
構造的な検討を行えば、はね出しの床をつくることもできます。


S造やRC造との混構造も可能で、
床や壁のみにCLTを用いることもできます。
これにより空間に変化がつくだけでなく、
木材はコンクリートや鉄に比べると軽量なため、
建物の軽量化に繋がります。


メリットの2つ目が多機能性です。


CLTは構造躯体としての役割の他、
それ自体が耐震性、耐火性、断熱性、遮音性を備えています。
耐震性でいえば、
日本CLT技術研究所が実施した震度6強の地震を想定した実大振動台実験では、
他工法では1階の高さで12cm程度の変形や歪みが生じるなど
家屋が使用不可能なレベルまで大破をしたのに対し、CLT建築は3cm程度の変形に止まり、
地震後も使用可能という結果が出ています。


3つ目のメリットが施工合理化です。


CLTは全て工場で加工されてから現場へと搬入されます。
そのため寸法精度が高く、建て方での歪み調整などの手間がかからず、
現場での作業がスムーズです。


また前述の通り、CLTは仕上げ材を兼ね、
材自体が耐震性などを持つため、
断熱材や筋交いなどが必要な従来の木造建築に比べると、
手間や材料が少なく済みます。
そして最後に、CLTは環境に優しいというメリットがあります。


CLTは木の塊であるため、
従来の木造建築物と比較して単位面積当たりの木材使用量が多くなり、
より多くの炭素を固定できます。


またCLT工法では、
ほとんどの接合部がボルト・ドリフトピンで接合されるため、
構造躯体にダメージを与えることなく解体が可能です。
仮設住宅にCLT工法を利用すれば、不必要な時に解体し、
必要な時には再組立をするといった使い方も可能となります。


CLTの活用事例


CLTの活用事例として紹介したいのが、
2023年5月に東京都の世田谷区で完成した
「LC-gate構法」を用いた2階建て店舗です。


「LC-gate構法」は岡山県のトップビルダー、
ライフデザイン・カバヤが運営する日本CLT技術研究所が開発した、
狭小地向けCLT建築の新工法。


間口方向の耐力壁を一切必要としないため、
柱型が出ず、間口の開口を大きく確保でき、
限られた空間を最大限に利用できるのが特長です。
世田谷区の物件は間口5.1mの狭小地にあり、
前面道路に工事車両を停められる時間も限られていました。


そこで、
CLTパネルに工場であらかじめ鋼板の外装材を貼り付けて搬入し、
パネルの施工と同時に外装工事が完了するようにしました。
この工夫と新工法の採用により、
制限の多い中での施工を実現し、広い室内空間の確保に成功しました。
建て方には7日を要しましたが、余裕を見ての工程としていたため、
4日間に短縮することも可能だと言います。


その他、住宅でもCLTの活用は徐々に進んでおり、集合住宅では、
大東建託が2022年8月に同社独自のCLT工法を採用した賃貸集合住宅を
完成させています。
日本CLT協会のホームページを見ると寒冷地仕様の戸建住宅の実例もあり、
屋根・床部分にCLTスラブ板を使用することで、積雪100cm地域でありながら、
強度・耐久性・断熱性・デザイン性を兼ね備えた、
見た目にもインパクトがある物件が紹介されています。


CLTは建物単位での活用だけではなく、ユニット単位での活用も見られます。
千葉県の日野興業は、
国産材CLTを構造材と内装材の一部に使った木造トイレユニット
「MOKUREST」を鹿児島県のMEC Industryと共同開発。


企業敷地内のトイレ増設や、キャンプ・グランピング施設、
道の駅などへの設置に活用できるとしています。
鳥取県内でキャンプ場を運営するTOTTORI-CAMPPARKは、
建築資材販売のミヨシ産業と協同し、
構造フレームに県産スギCLTを使ったサウナユニット「N-sauna」を発売しています。
大人6〜7人が入れるサイズ感で、屋内外に設置可能です。


木質感に富んだCLTは、アウトドアとの相性も良いようです。


CLTの普及にはコスト面など、まだ課題がありますが、
隈研吾氏、伊礼智氏など、
有名建築家もCLTを用いた家具や住宅商品を販売しており、
その可能性は高いと言えるはずです。環境に優しいことや、
建築の幅を広げることを考慮し、
今後の選択肢の1つとして
活用を視野に入れておくことも良いかもしれません。


(情報提供:住宅産業研究)

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