金利上昇、住宅価格上昇局面における若年層の住宅購入方法とは

「超長期ローン」、「ペアローン」は主流になる？

新築戸建住宅の購入のハードルは、年々高くなっています。
この要因は様々あり、例えば「実質賃金」。
厚生労働省が発表する「毎月勤労統計調査」によると、2022年から前年比でマイナスに振れ始め、
最新の2025年9月においても前年同月比でマイナスという状態が続いています。
また別の要因として、「住宅価格の上昇」があります。
建築費、人件費が上がっている中では住宅の価格も上げざるを得ません。
そのほか住宅ローンの「金利上昇」も住宅購入を難しくしている要因の一つです。
日銀が2024年3月にマイナス金利政策の解除を決めてから、金利の上昇局面に入りました。
例えば、借入金額3,000万円、35年ローンの場合の月々返済額は、
金利が0.5％から1.0％に上昇した場合、約7,000円増えます。年換算では８万円超に上ります。
つまり今の状況は、住宅購入検討者にとって、そのための資金を貯めにくく、
住宅の価格もローンの金利も上がって月々返済額がさらに増えるという
様々な要因が重なって強い向かい風となっていると言えます。

そのような市況において、住宅ローンを利用するユーザーの中には借入期間が40年、
50年といった超長期のものを選択する人が徐々に増えています。
住宅金融支援機構が2025年４月に発表した「住宅ローン利用者の実態調査」によると、
返済期間は「30年超～35年以内」がボリュームで45.8％、「35年超～40年以内」が18.4％、
「40年超～50年以内」が7.1％でした。
この調査において、「40年超～50年以内」が登場したのは2023年10月で、
利用率は当時が1.7％、それからの１年半で5.4ポイント上昇しています。
今後、超長期ローンが主流となるかは不明ですが、
既に住宅購入検討者の選択肢の一つとなっているようです。

そして、主に借入金額を増やすことを目的に、一定の利用者数がいるのがペアローンです。
これも住宅金融支援機構の発表によると、2024年のペアローンの利用率は全体の25.9％。
20～29歳に限定すると44.0％と、若者ほどペアローンの利用率が高い傾向にあります。
この最大のメリットは、夫婦２人でローンを組んだ方がより大きい額を借りられること。
しかしながら、それ以上に夫婦のどちらかが働けなくなったり、
出産や育児といったライフイベントを経験した後の収入の減少や
生活費の増加で返済が難しくなる可能性を考慮すると、
なかなか決断しにくいところではあります。
それでも前述の実質賃金の停滞、金利上昇、インフレが続く中では、
20代のペアローン利用率が今後も増えていくかもしれません。

「月々返済額の軽さ」を重視する若年層

先ほど紹介した住宅金融支援機構の調査において、
返済期間50年などの超長期住宅ローンの利用率は7.1％。
このほとんどは20代です。というのも、
多くの銀行が超長期ローンの返済期限を80歳としているためで、
50年であれば自動的に30歳以下のユーザーが対象となるためです。

超長期ローンを選択する最大の目的は、月々の返済額を抑えられることです。
「お金の余裕」は、貯蓄や教育費、趣味や副業といった
人生の選択肢の幅を広げる要素の一つです。
若者は「長く借りること」よりも「生活を圧迫せず、
他のことにも挑戦できる資金を守りたい」ということを重視していると言えます。

実際に、超長期ローンを利用するユーザーの中には、
返済を抑えて生まれた余剰資金を投資に回している人が一定数います。
自身の将来がどうなるか分からないという不安もある中では、
NISAやiDeCoなど資産運用をする若者が多く、
住宅を購入した後も投資を継続したいというニーズがあります。
「住宅を持ちながら投資もする」という二軸で
ライフプラニングをするというのも選択肢の一つです。
金利上昇局面と言えど、それでも低水準にあるのは変わらずで、
それであれば返済額を抑えてでも投資による利回りを優先するという人もいます。

50年という超長期ローンは「長すぎる」、「リスクが高い」など、ネガティブな意見が多数派です。
もちろん、若年層にとってもこのようなリスクを考慮していないワケではありません。
25歳で購入したら、完済となるのは75歳です。
その時の自身の状態を想像するのは容易ではありません。
そこで今のうちから様々な資産形成を行い、リスクも様々考慮した上で、
将来に備えるための選択肢の一つとして、
若者は超長期ローンを利用しているのだと考えられます。