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コミュニティ形成と住まいづくり(前編)集客・マーケティング,ハウスメーカー

ハウスメーカー
集客・マーケティング
2015.2.16

分からないことを質問サイトで尋ねる、最新ニュースについての意見をツイッターや掲示板を通じて交わし合う、いらなくなったものをネットオークションで売却する…。

相手の名前も顔も知らないままで、たくさんの用事を済ませられる時代になりました。
一方で、日本が高齢社会に突入していることを考えると、情報ツールに疎く、その利便性から取り残されている人もたくさんいることが容易に想像できます。


また、場所に依存しないバーチャルな交流が
発達してきたのに反し、物理的に近い距離にいる人との
関係性が希薄になってきていることも指摘されています。


こうしたリアルなコミュニティ意識の衰退は、
孤独死、独り暮らしの高齢者や女性の犯罪被害、
災害時の対応の遅れなどといった深刻な問題と
無関係ではありません。


凶悪な事件や大きな災害が起こるたびに、
近隣同士の見守りや助け合いといった
地域コミュニティの重要性がクローズアップされ、
住宅産業の分野でも様々な取り組みが
見られるようになりました。


マンションや分譲団地といった、一定の開発規模の物件での
取り組みが主流ではありますが、既存の住宅地での戸建建築や、
アパート等の土地活用の差別化手段としても、
「コミュニティ」をテーマとした提案が登場しています。

■ 場所のつながりが生む人のつながり
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

大型のマンションや分譲団地などでは、
これまで何の関わりもなかった不特定多数の
人々が集まって、新しい暮らしを営むことになります。


そのため、供給会社や管理会社によって
予め定められたガイドラインに沿って管理組合が組織され、
イベントの運営や共有設備の利用などを通じて
居住者の交流が生まれていきます。


近年では、防災をテーマにコミュニティ形成を
推進するスマートタウンなど、大規模分譲地の開発が
話題となっています。


しかし一部では、小規模であることを活かした
コミュニティ形成に挑戦している事例もあります。


名古屋市の地域密着型工務店、阿部建設では、
高額な防災設備を共同利用できる6区画の分譲地を開発しました。


1棟には太陽光発電、また別の棟には井戸、その他には
濾過機、発電機等々、各戸に分散して防災設備を設置し、
いざという時には共同で利用できるという仕組みです。


円滑な運営には高度なモラルも必要なため、
購入のハードルも高くなります。


しかしそれだけに、入居時点である程度の
意識共有を図ることができます。


また、食糧確保にも役立つ1坪菜園を全区画に設けているため、
収穫物の交換など日常的な交流が生まれやすい点も、
この分譲地の特長と言えます。


一方、都心部のタワーマンションなどでは、
単身者からファミリーまで年齢も生活スタイルも様々な人が
暮らしているため、隣人同士でもめったに顔を合わせず、
家族構成も分からないということもあります。


この隣人同士の距離感を縮めるために、
「ご迷惑おかけしますカード」というものが考案されています。


このカードに、

「○月○日、子どもの誕生日会で同級生が集まるので
騒がしくなるかもしれません」

などと記入して、
隣の住戸のドアノブにかけておくというものです。


隣家の生活時間帯が不明な場合でも気軽に伝言でき、
隣人も前もって事情を把握しておくことで、
多少の不便さを許容できるという効果が期待できます。


従来の「ご近所づきあい」と比べると、
「まどろっこしい」という感じもしますが、これも
時代と環境に即したコミュニケーションの形と言えます。


現代の都市生活において譲り合いや助け合いの関係を
育成するには、こうした地道なしかけも必要なようです。

■ コミュニティを促進する戸建プラン
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

分譲団地や集合住宅ではなく、旧来の住宅地での
戸建建築においても、コミュニティを促進する工夫はあります。


東日本大震災後に相次いで発売された
復興支援住宅の中にも、そうした提案が見受けられます。


これは、耐震性の高さやエネルギーの自給自足、
生活必需品の備蓄場所だけでなく、いざという時に
ご近所同士で助け合えるための備えも必要との
考え方から盛り込まれたものです。


つまりは、普段からの近所づきあいを促進するということで、
道路に面した縁側や掃出しの和室、広い玄関土間など、
家に上がり込まずにおしゃべりができる程度の空間が
推奨されています。


その他には、ギャラリー風に趣味の作品を飾れる開口部、
オープンカフェのようなウッドデッキ、ガレージセール
などができるピロティといった空間も、ご近所との
交流を促すきっかけとなりそうです。


また、若年層を地元に根付かせる、あるいは地元に呼び戻す
という意味では、二世帯住宅や長く住み継げる住宅の建築も、
コミュニティ形成の一端を担っています。


二世帯住宅のパイオニアである旭化成ホームズでは、
家族や地域・社会との繋がりを深め育む力を「実家力」と呼び、
同居していない家族も含めて、実家とのつながりを保つ工夫を提唱。


昨年発売した「都市の実家」では、通常の二世帯に加え、
同居していない子の荷物を預かる空間や、
その子が家族を連れて来ても全員で食卓を囲めるLDK、
将来訪問介護を受けやすい居室などが提案されています。


今後、中高年の建替えやリフォーム需要を捕捉するには、
「住みやすさ」に加えて「帰りやすさ」というものも
考慮していくべきでしょう。

(情報提供:住宅産業研究所)

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