値上げ不可避の中でいかに利益を守るか?
■値引き抑制・単価アップだけでなく、手戻りを減らそう
粗利を守る議論は「値引きを抑える」、
「単価を上げる」に寄りがちですが、
実務で利益を溶かしやすいのは、
設計〜発注で発生する手戻りです。
発注後の仕様変更や納まり変更、
確認漏れによる再手配が重なると、
差額以上に段取り替え・確認連絡・
再承認の時間が積み上がり、
利益がじわじわと消えていきます。
特に「設計→積算」、「積算→発注」、
「発注→現場」といった境目では、
「決まっていると思っていた」
という認識のズレが起きやすく、
小さなズレが工程全体に波及します。
また、メーカー改廃や納期の揺れがあると、
代替品選定→再見積→施主承認→再発注が連鎖し、
監督や職方の待ち時間という
見えない原価まで膨らみます。
例えば扉色の変更ひとつでも、見切り材や取手、
照明の色温度、床材との相性にまで影響し、
図面差し替えと拾い直しが発生します。
小さな変更が「再確認の連鎖」に
なるのが手戻りの怖さです。
境目でのロスを防ぐコツは、
「引き継ぐ情報の最低ライン」を
会社の型として決めることです。
設計から積算へ引き継ぐ時点で、
標準仕様からの例外、造作範囲、
設備グレード、外構の有無、
仮設条件を一つの書類に揃えておきましょう。
積算から発注へは、確定した品番・数量
・納期・代替候補の情報共有を必須にします。
現場へは、最新版図面と発注一覧が
照合済みの状態で渡すようにします。
このように、引き継ぐ情報を揃えるだけで、
後工程の確認回数が減り、手戻りも減ります。
ほかにも効果が大きいのが、
設計確定日を単なる目安ではなく
「ここを過ぎたら次の工程に進む」
という区切りにすることです。
確定日以降は、「基本は変えない」という前提で
現場と発注を動かすと良いでしょう。
もちろん、確定日を過ぎても変更が
ゼロになるわけではありませんので、
大切なのは「変更を禁止する」ことではなく、
「変更の出し方と扱い方を決めておく」ことです。
具体的には、変更が出たときに、
金額の差だけを伝えるのではなく、
「納期は遅れないか」、「工事の段取りは変わらないか」、
「もう発注済みなのか」、「実際に変更できるのか」まで
セットで確認して、説明するようにします。
これを心掛けるだけで、
後から現場が止まる変更が大きく減ります。
また、変更の連絡ルートがバラバラだとズレが起きます。
電話、個人LINE、口頭、メールが混ざると
「聞いていない」、「それは前の仕様だ」ということが増え、
結果的に手戻りになります。
そのため、変更の連絡は必ず
“ここから出す”という窓口を一つに決め、
誰が見ても履歴が残る形で進めるのがよいでしょう。
■デジタル化で受発注のブレをなくそう
「引き継ぐ情報の最低ライン」を決めたとしても、
中々定着させるのが難しいというのが現実でしょう。
忙しい時ほど電話と口頭での伝達が復活し、
情報が散らばって、手戻りも多くなります。
ルール定着のためには、デジタル化を進め、
仕組みを整えることが有効です。
ここからは、決めた最低ラインを守れるように
「台帳」、「チェック」、「変更の管理」について、
仕組み化する方法を、事例を交えながら紹介します。
最新情報が一つの場所に集約するようにしましょう。
台帳が散らばると、古い単価で見積を作り直したり、
納期未確認のまま工程を組んで現場が止まったりしてしまいます。
ある工務店では、協力会社から区切りごとに
納品書を提出してもらう「納品書アプリ」をkintoneで作成し、
支払い額を正確に把握できるようになったことで、
資金計画の精度が向上したという事例があります。 引継ぎの際のチェックは、拾い漏れが起きやすい箇所を
「毎回同じ順序」で確認するようにします。
積算前は仕様決定シートの版を確認し、
発注前は納期・代替可否が埋まっているかを見る。
着工前は「最新版図面×発注一覧」の照合を必須化する。
担当者の手腕ではなく、
手順で品質を担保できるようにしましょう。 変更管理は、
「施主の合意→差額の確認→工程への影響→発注可否」を
全て確認して初めて確定させるようにし、
差額だけを先に出して工程を
後回しにするようなことはしないようにしましょう。
ここで気を付けたいのが、
口頭発注をなくして入口を一本化し、履歴を残すことです。
具体的なアプリの活用事例で言うと、
ANDPADの導入によって口頭発注がなくなり、
発注と請求金額の不一致による
「言った・言わない」のトラブルが減って
原価管理の精度が上がったという工務店もあります。 粗利を守るのは「値引きを我慢すること」ではありません。
設計確定の基準を明確にし、
台帳・チェック・変更管理をしっかり行い、
手戻りを減らせた会社ほど、
利益も現場の余裕も生まれます。
(情報提供:住宅産業研究)