“ニュータウン”の再活性化目指す住宅会社
1960年代から全国で開発が進んだ大規模住宅団地。
「ニュータウン」とも呼ばれ、中には総戸数１万を超えることもあります。
そして現在、分譲されてから50～60年以上が経過し、
「住人の減少」や「高齢化」といった課題が出始めています。
これらの課題を克服し、再活性化を促すべく、
大手ハウスメーカーなどが取り組みを強化しています。
タウンマネジメントで街の賑わい創出
大和ハウス工業は1962年以降、
数千世帯が居住する大規模戸建住宅団地「ネオポリス」を全国で開発しました。
分譲されてから60年以上経過したものもありますが、
このようなネオポリスに再び活気を取り戻すため、
「再耕」を目指して2019年に立ち上げたのが「リブネスタウンプロジェクト」です。
このプロジェクトを進めているのは全国８ヶ所で、
その中でも成果が出始めているうちの一つが兵庫県三木市の「緑が丘・青山ネオポリス」です。
近年、話題となったのは同社が団地内の空き家を買い取り、
コミュニティ拠点に再生させた「たかはしさんち」プロジェクトです。
1975年に建築された建物で、リノベーションの後、2021年にオープンを迎えました。
現在、地域の住民有志と協力し、定期的にイベントが開催されています。
ひな祭りやクリスマス会、工作イベント、バザーなど様々で、
既に地域住民の憩いの場ともなっています。
そして、2026年の春には、新しい施設「（仮称）三木地域交流拠点」が竣工を迎える予定です。
三木市のPPP事業の一つで、公募型プロポーザルによって
大和ハウス工業が運営事業者の指定を受けました。延床面積は1,938平米。
建物に入る機能としては、「コワーキングスペース」や「行政ステーション」、
住人の交流の場である「フリースペース」、「プレイパーク」、
「チャレンジショップ」などの予定です。
特に特徴的なのが「チャレンジショップ」で、
これは短い期間、住人が自身のショップを出せるというものです。
人口１万人以上が居住するこのネオポリスの住人の中には、
自身の趣味などを生かした飲食や物販の店舗に挑戦したい人もいます。
ただ、ゼロから店を立ち上げるのはリスクもあり、決断が難しいところです。
「チャレンジショップ」ではトライアルで出店できるというメリットがあります。
ここで手ごたえを感じられれば、自身で店を出す人も出てくるかもしれません。
ネオポリスの中で自身のお店を出す住人が複数出てくれば、また新たな活気が生まれるはずです。
住人の力で賑わいを創出できるうえ、店舗運営となると住人自身の収入にもなります。
このような住人の「やりたい」を支援する仕組みがあるのは、
ネオポリスの新しい魅力にもなるはずです。
分譲開始から40年超に亘って成長し続ける住宅団地
分譲されてから数十年間、成長を続ける住宅団地もあります。
その一つが千葉県佐倉市にある「ユーカリが丘」です。
全国でも数少ない「高齢化が進まない住宅団地」として知られています。
ユーカリが丘の開発を手掛けるのは山万（株）です。
開発がスタートしたのは1971年で、サステナブルな住宅団地を目指すべく、
段階的に住宅供給を行っています。
分譲自体は1979年から始まりましたが、一気に供給することはなく、現在も継続しています。
人口はこの５月時点で19,045人、世帯数は8,242に上ります。
そして、団地内には「山万ユーカリが丘線」という
独自の新交通システム（モノレール）を敷設しています。
暮らしをサポートするためのサービスとして、
グループ会社や行政が総合子育てセンターや温浴施設、保育園、学童保育、
サービス付き高齢者住宅、グループホーム、医療・介護施設などを運営しています。
さらにユーカリが丘駅の徒歩圏内にはホテルがあるほか、
2016年にはイオンタウンも誕生するなど、商業面においても発展しています。
ユーカリが丘では、住人が住み継いでいくための独自システムとして
「ハッピーサークルシステム」を導入しています。
これは高齢の住人のためのシステムで、サ高住や福祉施設などに移り住む人の自宅を、
査定価格の100％で山万が買い取るというものです。
買い取った物件はリフォームし、若い世代に向けて再販売しています。
住人のライフステージに応じた暮らし方に対応するサービスを用意することで、
若者世帯の流入にも効果が出ています。
(情報提供：住宅産業研究)
