家づくりにおけるAI活用最前線
プラン作成の手間は一気に短縮できる?
近年、住宅業界でもAIの活用が進んでいます。
特に家づくりの初期段階で欠かせないプラン作成の工程においては、
その効果が著しく現れています。
そこで、AIがどのようにプラン作成の手間を短縮し、
効率化に貢献しているのか、事例も交えて紹介します。
まず、従来の住宅プラン作成は多くの時間と労力を要してきました。
プランナーが敷地条件や施主の要望をヒアリングし、
それを基に複数の図面やレイアウト案を手作業で作成するため、
どうしても時間がかかります。しかし、AIによりこの工程が変わってきています。
例えば、AIによる自動プラン生成ツールは、
施主の希望条件や生活スタイル、敷地形状などのデータを入力するだけで、
最適な間取りプランを瞬時に提示してくれます。
最新の事例として、住友林業は規格型住宅商品「Premal」のお客様向け提案支援システム
「AI間取り検索」のPoC(概念実証)モデルを2025年4月に完成させました。
同システムは、経験豊富な担当者の知識・知見を共有させたAIがお客様から
ヒアリングした情報をもとにPremalの間取りを選び、
最適な提案につなげるというもの。営業担当がお客様の家族構成や住宅の好み、
現在の住まいの悩みなどをヒアリングしてシステムに入力すると、
「顧客要望深掘AI」がお客様の潜在的な要望を議論し示唆。
その後「間取り検索AI」が検索し複数の間取り候補を選びます。
営業担当はAIが選んだ候補をベースに、
お客様に最適な間取りとライフスタイルがイメージできる提案をすることができます。
また、AIは過去の建築データや施主のフィードバックを学習し、
より良い提案を行うように進化することも可能です。
これにより、設計の質は時間とともに向上し、
顧客満足度のアップに寄与することも期待できます。
一方で、AI導入には慎重な対応も必要だということを忘れてはいけません。
全てをAIに任せてしまうと、細かなニーズや感性を反映しきれない場合があります。
そのため、AIはあくまで設計支援ツールとして活用し、
最終的な判断やデザインの微調整は人間の設計士が行うことが理想的でしょう。
お客様のイメージ具現化や営業活動にも活用できる
住宅業界でのAI活用は、プラン作成の効率化だけにとどまりません。
最近では、お客様のイメージの具現化や営業活動のサポートにも
AIが役立つケースが増えてきています。
まず、お客様が思い描く理想の住まいの漠然としたイメージを
言葉で伝えるのは、意外と難しいものです。
そこで、AIを活用したビジュアル化ツールが注目されています。
これらのツールは、お客様の希望やキーワードを入力するだけで、
AIが最適な外観や内装イメージの画像や3Dモデルを自動生成できます。
実際に目で見て確認できるため、お客様とのコミュニケーションがスムーズになり、
イメージのズレを減らせます。
1つの例として、ChatGPTは2025年3月のアップデートで
言語モデル自体が画像生成を行えるようになりました。
例えば、「インダストリアルな印象のリビング、黒を基調とした家具、グレーの壁、昼光」
といった具体的な指示を与えると、イメージに沿った画像を生成してくれます。
これまでのバージョンに比べ、崩れや異様な描写も出にくくなっており、
出力された画像に対し「ここを修正して」と指示すれば、その対応もしてくれます。
お客様への初期対応でイメージを共有する際などは十分に活用できるレベルです。
また、ChatGPTのほかにも、MidjourneyやGoogle ImageFXなど、様々な画像生成AIがあり、
それらも合わせて、営業活動に取り入れることを検討しても良い段階まで来ていると言えます。
さらに、営業活動の面でもAIは力を発揮しています。
顧客の過去の問い合わせ内容や好みの傾向を分析し、
最適な提案資料の作成やプレゼンテーションの準備を自動化。
営業担当者は時間を効率的に使い、より深い提案やフォローに集中できるようになりました。
また、AIチャットボットによる初期対応で基本的な質問に迅速に答えることができ、
顧客満足度の向上にもつながっている例も散見できます。
ただし、プラン作成以外でAIを活用する際にも注意点があります。
まず、生成されるイメージ等はあくまで参考であり、
現実の施工や素材感とは異なる場合があるため、
お客様にはその点をしっかり説明し、実際のサンプルなどを併用することが重要です。
今後、AIは設計やお客様のイメージの具現化、営業活動の支援・効率化ツールとして、
ますます住宅業界に浸透していくでしょう。
また、人手不足が深刻化している建設・住宅業界では、
その課題解決のためにAI活用が必須になってくるとも考えられます。
お客様の納得度の高い家づくりを行うため、会社の存続のため、
どちらのためにもAI導入を視野に入れるべき時期が来ているのかもしれません。
(情報提供:住宅産業研究)