大手ハウスメーカーのストック戦略

大手ハウスメーカーは昨今、自社が建築した中古住宅の再商品化に取り組んでいます。
その象徴とも言える組織が、大手ハウスメーカー10社による「スムストック」です。
2008年の設立以来、優良な中古住宅の流通促進に寄与してきました。

大手10社による中古住宅ブランド「スムストック」の動向

「優良ストック住宅推進協議会」、
通称「スムストック」は8月29日に記者会見を開催し、2024年度の実績を報告しました。
2025年度より、新会長には大和ハウス工業の会長である芳井氏が就任しました。

2024年度のスムストック成約件数は2,262件で、過去最高を更新しました。
前年から172件、8.2％の増加で、累計契約数は約2万2千件に到達しました。
特に買取再販の拡大が大きな成長要因で、
2020年度の154件から、2024年度は406件まで増加しています。
中古買取再販型のスムストックに関わるガイドラインの制定や、
再販物件を多く販売した営業担当者を表彰する制度の導入なども、
実績を後押ししていると見られます。

スムストックに加盟する10社の戸建ストックは約407万棟に上ります。
このうち、中古住宅として市場に出る物件は年間で推定約1.1万棟ですが、
スムストック経由で流通した比率（捕捉率）は19.7％。
前年より約1ポイント上昇となりました。
同協議会としては早期に20％達成を目標に掲げ、中期的には25％を狙うとのことです。

スムストックの棟数が増加した要因には、
エンドユーザーから中古住宅が選ばれやすい市況環境であることも挙げられます。
物価上昇や金利動向により新築需要が盛り上がりにくく、
高品質ながら価格が抑えられたスムストックは手が届きやすく、
最近では30～40代の子育て世代からの需要が徐々に拡大しつつあるようです。

スムストックの認知度も上昇傾向にあります。
同協議会ではかつてTVCMを実施したこともありましたが、
この数年はWEB広告やSNS活用に注力し、ホームページ刷新なども実施しました。
自宅の売却を検討する戸建オーナーを対象に実施した調査（2025年６月）では、
ブランド認知度が57.1％で、１年前から5.2ポイントアップしました。

また、スムストックを扱う営業担当者、通称「スムストック住宅販売士」も順調に増えており、
累計で8,726名、実務従事者は1,509名です。
販売士の早期戦力化と負荷軽減に向け、
新たな管理システムの運用を開始したとのことで、さらなる業績拡大が期待されます。

中古買取再販事業の拡大狙う大手ハウスメーカー

不動産仲介は、売りたい人と買いたい人をそれぞれ見つける必要があります。
とはいえ、「家を売りたい」と思ったタイミングで、その家を買いたい人が現れることは多くなく、
物件売却までに想定以上に時間がかかったというケースはよくあります。
しかし、物件オーナーの中には、短期間での売却、つまり現金化を早めたい人もいます。
そのような時に買取を行っている会社はオーナーにとって第一候補に挙がりやすくなります。

その過程で不動産市場に増えてきているのが「中古買取再販」の物件です。
近年はこのビジネスに注力する大手ハウスメーカーが多くなっています。
そして、その１社がパナソニックホームズです。
この数年で中古買取再販を強化してきており、
2024 年度の買取再販実績はマンショ ン80 戸、戸建25 戸の計105 戸でした。
売上高としては前年比74％増の103 億円と大きく伸ばしました。
中古住宅は、新築住宅がインフレ下にある昨今、
選択肢に挙がりやすく、着実に需要が顕在化していると見られます。
そして、同社はこの４月、かつて自社で供給した戸建住宅を
ターゲットとする買取再販ブランド「ReVALUED」を立ち上げました。
この第１号物件となる販売用モデルハウスも滋賀県草津市にオープンしました。
同モデルハウスは、2013年に街びらきを迎えた分譲住宅団地
「スマートシティ草津」内にある築11年の戸建住宅です。
内装・建具等を全てリフォームしているほか、
リフォーム用の全館空調システムも導入されています。

大手ハウスメーカーの中で最も多くの再販物件を手掛けていると見られるのは、大和ハウスです。
2024年度はマンション87 戸、戸建84 戸の計171 戸の実績でした。
近年はホテルや倉庫など住宅以外の建築物の買取再販事業にも積極的で、
「BIZ Livness」のブランド名でさらなる事業拡大を狙っています。