事業用不動産もストック活用の時代へ
住宅、非住宅問わず、建設費の高騰が続いています。
一部の再開発プロジェクトや新築のプロジェクトの計画がその煽りを受けてストップするという事態も出てきています。
住宅においてストック流通が活性化しているように、事業用不動産の運用においても、
新築だけでなくストックを活用することも検討すべきタイミングが到来しています。
ストックをリフォームして利用するのであれば、新築や建替えよりもコストと工期を削減できます。
既存の建物の中には、さらに数十年と長期間運用できる躯体性能を有するものもあり、
新築よりも投資メリットを享受できるというケースもあるはずです。
非住宅のリフォーム市場規模が拡大中
既存の事業用不動産の活用が進む中で、住宅を主軸としているビルダー・工務店も、
ここで発生するリフォーム需要は狙っていきたいところです。
実際に、このような不動産を含む非住宅のリフォーム市場の規模は拡大途上にあります。
そのエビデンスでもあるのが、国交省が四半期に1回公表している「建築物リフォーム・リニューアル調査報告」です。
非住宅建築物の受注高は近年拡大基調にあり、2024年度は 9兆6,984億円でした。
住宅でも前年比で+7.7%と伸びていますが、住宅に係る工事の受注高は4兆1,318億円で、その差は2倍以上です。
「非住宅建築物」には「事務所」、「飲食店」、「物販店舗」、
工場、作業場といった「生産施設」、「医療施設」などの建物用途が含まれますが、
そのうち「事務所」の受注高が2兆2,053億円とボリュームです。
そして、伸率が大きいのは工場や作業場といった「生産施設」で、前年比13.8%増の2兆475億円でした。
大和ハウス工業が仕掛ける「ビズ・リブネス」の実態
住宅業界において、非住宅分野のリフォームやストック活用に注力する企業の代表格が、大和ハウス工業です。
同社は2018年より住宅、非住宅様々な建物を再生させる事業「Livness(リブネス)」をスタートさせました。
2024年度の売上高は4,055億円でした。
リブネス事業はハウジングソリューション領域の「リブネス」と、
2024年から本格稼働しているビジネスソリューション領域の「BIZ Livness(ビズ・リブネス)」に大別されます。
これら領域における売上高4,055億円の構成比としては半々です。
ビズ・リブネスに注力するのは、大和ハウスの流通店舗事業部、建築事業部、環境エネルギー事業部、
そして、グループ会社であるホームセンターのロイヤルホームセンター、大和ハウスプロパティマネジメント、
大和ハウスリアリティマネジメント、フジタ、デザインアークなどが挙げられます。
取り扱う建物用途は工場や倉庫、オフィスビルが中心です。
ビズ・リブネスの成長を牽引しているのは、
中古買取再販です。近年は新築の建設コスト、土地価格も上昇していることもあり、
新築と既存建物のコストのギャップが大きくなっています。
しかしながら、改修工事によって新築と遜色ない内装、外装を実現できます。
立地が良ければ需要も見込みやすいです。
既存の建物でも投資コストを十分回収できるということで、興味関心を示す企業が増えているようです。
2024年度にビズ・リブネスで販売した事業用不動産の1件当たりの金額は約3億円でした。
この価格は2025年度に入ってからさらに上昇しており、中長期的には10億円内外まで伸ばすことを想定しています。
その中で、数億円クラスの物件が手薄になることが懸念されますが、
ここをグループ会社のデザインアークなどがカバーしていく予定です。
工事の規模としては基本的に一級施工管理技士による専任の管理が必須となりますが、
この資格面でも対応を進めています。
ストックを活用するメリットは複数あります。一つは「用途地域」です。
建物建設後に設定された用途地域の規制により、
同じようなボリュームに建て替えるといったことができないケースが一定数あります。
建替えとなると、建物の容積率や延床面積を小さくしたりする必要があるなどで、収益性が落ちる可能性があります。
また、近隣配慮という観点では、建替え工事となると近隣住民に反対を受ける可能性もあります。
ストックを活かすことと、建替えを行うとでは、ハードルが様々異なるようです。
(情報提供:住宅産業研究)