サウナ付き、ペットフレンドリー…、コンセプチュアルな賃貸住宅が人気
賃貸派が増加中? 背景に住宅価格の上昇
住宅の購入を検討するユーザーが減っているかもしれません。
国土交通省が5年毎に発表する住生活総合調査では、
持家に居住する世帯、借家に居住する世帯、合計12万世帯を対象に、
「今の自宅から住み替えをするなら『持家』か、『借家』か、『その他』か」
のいずれかを選択してもらうアンケートを実施しており、その結果を公表しています。
そして、この回答率の推移を経年で見てみると「借家」が上昇していることが分かります。
それぞれ回答状況を見ていくと、持家に居住する世帯の「借家」の回答率は、
直近2023年において19.4%でした。
遡ること20年前の2003年の回答率は1.9%で、当時と比較すると10倍に増えています。
そして、借家に居住する世帯の「借家」の回答率は2023年48.8%で、
20年前から2.6倍に上昇しています。
この事象において考えられる要因は様々ですが、一つが住宅価格や地価の上昇です。
住宅価格については、建築資材や職人などの外注費が上昇しているかぎり、
今後も上昇傾向が続く可能性が高いです。
さらに、この新築住宅の価格上昇に引きずられる形で、
中古住宅についても価格が上昇傾向にあります。
結果として、「住宅購入を控える」というユーザーも一定数出てきています。
さらに最近では金利が上昇局面に入っていることを考慮すると、
この傾向がより強くなっている可能性が高いです。
実質賃金も伸び悩みが続く状況においては、住宅購入資金を作ることも難しくなっています。
元社員寮を賃貸マンションに大改修! ウェルビーイング訴求で反響好調
最近では、賃貸住宅といってもただ住むだけでなく、QOLの向上が期待できたり、
心身の健康に良い状態を保てるような「ウェルネス」、
「ウェルビーイング」をテーマにする物件も増えています。
今回は2つの物件を紹介します。
まずは株式会社ベルテックスが手掛けた「ベルシードステアー西早稲田」です。
総戸数15戸で、1LDKのディンクス向けマンションとして2024年6月に誕生しました。
特徴は「サウナ付き」で、1階の3戸だけをサウナ付き物件として展開しました。
電気式のサウナで、好きなタイミングでサウナに入ることができます。
間取りについても、サウナとユニットバスを隣接させるなど動線計画に配慮しており、
ドライエリアも用意して、外気浴を楽しむことも可能とのことです。
サウナ付き賃貸マンションは同社として初めての試みでしたが、反響は上々。
賃貸住宅の1階の住戸は、一般的に人気があまりないとされていますが、
この物件については募集後すぐに入居者が決まったとのことです。
2つ目の物件は、ゼネコンの株式会社奥村組が、
自社の元社宅をリノベーションによって全住戸ZEH水準まで高めた賃貸マンション
「OC RESIDENCE R NISHINOMIYA OGO」(オーシーレジデンス アール 西宮大箇)です。
建物の建築時期は1977年。築古だったこともあり、
構造躯体はクラックの補修や耐震補強を実施しました。
躯体改修と同時に、給排水管、住設機器の遣り替え工事、
そして住戸内においては内窓の設置、断熱材の施工を実施しており、
断熱性能はZEH水準まで向上しています。
共用部のコンセプトは「ウェルビーイング」。
自然の要素を積極的に取り入れ、マンションの中庭などに
30種類の在来種の樹木を植えています。
そして、全住戸をペット可としていますが、
共用エリアにはドッグランスペースやペットシャワーも備えているほか、
キッズスペースやワークスペースも完備しています。
専有部の住戸は先述した通り、断熱性を高めており、
居住者だけでなく、ペットにとっても住み心地がいいはずです。
住戸のプランニングに際しては、リノベーションを担当した
リノベる株式会社がこれまで蓄積してきた自社の顧客データを活用しました。
内装デザインは北欧テイストとし、玄関は土間を広く取り、
ベビーカーや自転車が置けるようにしたり、
観葉植物などのためのインナーバルコニーを配置したりといった工夫があります。
賃貸住宅のオーナーにとっては、いかに満室にできるかが永遠のテーマです。
これまでは築浅などの築年数、駅からの距離といった利便性などが物件の重要なポイントでしたが、
これからは、「ウェルネス」や「ウェルビーイング」といった入居者の心身の満足感につながる仕掛け、
付加価値が差別化につながる可能性が高いです。
(情報提供:住宅産業研究)