住宅がメンタルヘルスに与える影響

自然は心に優しい？

SNSの浸透等により、体だけでなく心も疲れやすい現代。
自分のメンタルをいかにケアするかということは、日常生活において重要になってきています。
人間関係や学校・職場環境など、
健やかな精神を保つために見直すべきことはいくつか挙げられますが、
中でも普段の生活を送る住宅という空間は、私たちの心身に大きな影響を与えます。
今回は、健やかな精神のために、どのような住宅提案が行えるかを考えていきます。

まず、近年注目されているのが自然との関わりです。
木々や草花、水の流れといった自然環境が人のストレスを和らげるという
研究結果は多く存在しており、
住宅においても、自然の要素を取り入れることが心の健康に繋がる可能性があります。
例えば、窓から緑が見えるかどうかは、日々の気持ちに少なからず影響を与えます。
外に植栽があるだけで、四季の移ろいを感じることができ、
気分のリセットや安心感を得やすくなります。
日本では昔から「借景」という考え方があり、
庭や近隣の緑を住まいに取り込む工夫がされてきました。
こういった提案を取り入れることも一つの手段でしょう。
外からの視線が気になる場合は中庭などの提案も有効だと考えられます。
都市部においても、植物が置けるようにベランダを設ける等といった小さな工夫で、
日常に自然を感じることは可能です。

自然素材の活用も大きなポイントです。
木材や珪藻土など、自然由来の素材には独特の質感や香りがあります。
特に木の香りは自律神経を整える効果があるとされ、
リラックスした気分を生みやすいと言われています。
フローリングに無垢材を採用したり、一部の壁に木材を使ったりすることで、
視覚・触覚・嗅覚を通じて自然を感じられる住宅になります。

光や風を取り込みやすい設計とすることも心掛けたいところです。
自然光を十分に取り込む窓の配置、風が抜ける間取りは、
快適性だけでなく精神的な安定にも寄与します。
明るく風通しの良い空間は、日常を前向きに過ごす力を与えてくれます。

「自然は心に優しい」というのは単なる感覚的な話ではなく、多面的に実証されてきています。
お客様の関心は性能や間取り、デザインといったことに向きがちですが、
自然を取り込むことで心地よさや安心感のある暮らしが実現できることもお伝えしたいものです。

セルフケアがしやすい空間づくりを

自然の要素を住まいに取り入れることに加えて大切にしたいのが、
セルフケアを実践しやすい空間とすることです。

まず、気持ちの切り替えが行いやすい空間づくりを心掛けると良いでしょう。
例えば、仕事とプライベートが混在しやすい在宅勤務では、公私の切り替えが難しくなります。
書斎やワークスペースをリビングから分けて設けたり、
視線を遮るパーテーションを活用したりするだけでも、オンとオフを切り替えやすくなります。
こういった提案により、仕事の緊張感を私生活に持ち込まず、心の休息が得られやすくなります。

メンタルヘルスにとって、睡眠も非常に大切な要素です。寝室においては、
照明計画や遮光の提案を工夫するほか、
心が落ち着きやすい色使いとすること等も心掛けておくと良いかもしれません。

リラックスできる「自分だけの場所」を設けることも効果的です。
読書をする小さなコーナー、音楽を楽しむスペース、瞑想やストレッチを行うスペースなどは、
特別に広い空間がなくても実現可能です。
自分だけの場所があれば、自分を労わる時間も確保しやすくなります。

収納の工夫もセルフケアにつながり得る要素です。
物が散乱した空間は視覚的なストレスを生み出し、落ち着きを妨げると言われています。
必要なものを必要な場所に収められるようにすることで、心の余裕が生まれやすくなります。
片づけやすさを意識した住まいは、家事ストレスを軽減するだけでなく、
ゆとりの時間と空間を創出し、日々のセルフケアを自然と後押ししてくれると言えます。

設備においても、居住者のセルフケアを後押しするものは多くあります。
例えば浴槽には肩からのかけ湯をできるような製品もあり、
リラックスタイムの質をより向上させることができるでしょう。

今回紹介したような、自然素材や植栽、光や風を取り入れたり、
居住者の生活リズムや価値観に合わせたセルフケアをしやすい住宅提案ができれば、
住まいは心を養う場所になります。
お客様と家づくりを行う際は、性能や間取りだけでなく、
心が安らぐ仕組みを組み込む視点も持っておくと良いかもしれません。