住生活基本計画が指し示す10年後の住宅市場業界ニュース,市場動向,リフォーム・リノベーション
前回に続いて、3月18日に閣議決定された、今後10年の国の住宅政策の方針を示す「住生活基本計画」についてご紹介します。
今回は、前回ご紹介した住生活基本計画で掲げられた8つの目標を達成するための基本的な施策の中から、主なものを見ていきます。
■子育て世帯・高齢者が安心して暮らせる住生活の実現
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住生活基本計画の1つ目の視点「居住者からの視点」で
設定された目標1~3では、若年・子育て世帯や高齢者、
また低額所得者等の“住宅の確保に特に配慮が必要な人”が、
安心して暮らすことができる住生活の実現目標が示されています。
これらを達成するための施策として、まず若年・子育て世帯向けには、
世代間で助け合いながら子供を育てることができる
三世代同居・近居の促進等が挙げられています。
また、子育て世帯向け住宅の供給に併せ、
キッズルームを整備する等、地域ぐるみで子供を
育む環境を整備していくということです。
高齢者向けの施策としては、
バリアフリー化やヒートショック対策に加え、
身体・認知機能等の状況を考慮した部屋の配置・設備等、
高齢者向けの住まいや多様な住宅関連サービスのあり方を示した
「新たな高齢者向け住宅ガイドライン」を策定します。
その他にも、住み替え等の住生活関連資金を確保するために、
公的保証による民間金融機関のバックアップなどで
リバースモーゲージの普及を図ること等が挙げられています。
住宅確保要配慮者のためには、空き家活用の促進とともに、
民間賃貸住宅を活用した新たな仕組みの構築も含めた
住宅セーフティネット機能を強化するということです。
これにより、低額所得者や障害者、ひとり親・多子世帯等が
安心して暮らせる住宅を確保できる環境を実現します。
■リフォーム・中古住宅市場規模を20兆円へ
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目標4~6は、「住宅ストックからの視点」で設定された目標です。
既存住宅の流通と空き家の利活用を促進し、
住宅ストック活用型市場への転換を加速させることを目指しています。
基本的な施策としては、インスペクションや
住宅瑕疵保険等を活用した品質確保を行い、
資産としての価値を形成するための
施策の総合的な実施を行います。
また、急増する空き家問題については、
空き家を地方移住者の住居や、介護・子育て施設として活用し、
活用できないものについては、計画的に解体すること
などを促していくということです。
これにより、対策を取らなければ、
2023年には約500万戸に増えると予測される空き家を、
100万戸程度抑制し、2025年までに約400万戸に抑える
という数値目標を打ち出しています。
目標7~8は、「産業・地域からの視点」の目標で、
住生活を支え、強い経済を実現する担い手としての
住生活産業を活性化するために策定されています。
住生活産業の担い手を確保・育成し、地域経済を活性化するとともに、
良質で安全な住宅を供給できる環境を実現するということです。
また、住生活に関連する新しいビジネスを成長させ、
居住者の利便性の向上とともに、経済成長に
貢献するということも盛り込まれています。
基本的な施策としては、地域材を用いた
良質的な木造住宅の供給促進や、
それを担う設計者や技能者の育成等の
生産体制の整備などが挙げられています。
また、リフォームやインスペクション、
空き家管理などの住宅ストックビジネスの活性化や、
家事代行等の子育て世帯・高齢者世帯向けサービス、
IoT住宅やロボット技術を活かした住生活関連の
新たなビジネス市場の創出・拡大の促進を目指しています。
地域の魅力の維持・向上のためには、地域の特性に応じて、
居住環境やコミュニティをより豊かなものにすることを目指します。
さらに、自然災害等に対する防災・減災対策を促進し、
居住者の安全性の確保・向上を促進するということです。
今回新しく閣議決定された住生活基本計画では、
少子高齢化や人口減少に関連する問題の
解消に特に力を入れています。
そのための有効な方法として、空き家を減少させるとともに、
空き家を活用する施策も多く見られます。
中古住宅の流通を増やし、空き家の発生を抑えるため、
リフォーム産業を成長させる目標を掲げ、
2013年に約11兆円だったリフォーム・中古住宅市場規模を、
2025年には20兆円に伸ばすとしています。
(情報提供:住宅産業研究所)