冬本番、住宅における寒さ対策を見直しておこう
気温が本格的に下がり始めるこの時期、住宅における寒さ対策は、
単なる快適性の問題ではなく、健康・省エネ・住宅の長寿命化など、多方面に影響を与えます。
とくに近頃は、冬に住宅内でヒートショックが起こるリスクが社会問題として注目され、
住まいの温熱環境の質がこれまで以上に評価されるようになっています。
新築住宅の断熱基準の底上げも行われ、業界全体として断熱に力を入れるようになっています。
そんな中、科学的な根拠を示しつつ、「実際の暮らしがどう変わるのか」を
丁寧に説明できるかどうかが、お客様の信頼を獲得するためのポイントとなってきています。
建物自体、設計による提案
冬の寒さ対策はまず、「建物そのものがどれだけ熱を逃がさないか」というのが基本です。
住宅会社としては、窓・断熱・気密・日射取得の4つを軸に、
建物の性能をどう高めるかをお客様にわかりやすく伝えることが重要です。
最も効果が大きいのは、やはり開口部の見直しです。
住宅の熱の流出入の約6割は窓からと言われ、
ガラス性能とサッシ性能の選定は冬の快適性に直結します。
樹脂サッシ+Low-E複層ガラスを標準化している会社も増えており、
予算に応じてトリプルガラスも選択肢に入れながら、
住宅全体の熱損失係数を数字で示すと説得力が増します。
断熱材に関しては、単に厚みを増やすだけでなく、
「どこに熱橋が生まれやすいか」を理解し、施工の精度を高めることが大切です。
特に柱・梁・窓周りなどは熱が逃げやすいため、
現場での補修やチェック体制を徹底しましょう。
最近は充填断熱+外張り断熱のダブル断熱を採用する住宅会社も増え、
性能にこだわる層に対しては、寒冷地だけでなく都市部でも訴求力を発揮しています。
気密性の確保も冬の快適さには欠かせません。
C値の改善は冷暖房効率向上だけでなく、
室内の温度ムラを減らし、廊下や脱衣所の冷えを防ぐ効果があります。
気密測定を実施する会社は施主からの信頼も厚く、
見えない品質を「見える化」する大きな武器になります。
設計段階での「冬の日射取得」も大切にしたい要素です。
南面の窓から入る冬の日射は無料の暖房です。
庇の出寸法を最適化することで、夏は遮り、
冬は取り入れるといった計画が可能になります。
中庭や吹き抜けを活かせば、採光とともに日射の恩恵を受けられ、
建物全体の暖かさを底上げできます。
建物自体の性能向上は、一度整えれば
長く価値を発揮する投資効果の高い対策と言えます。
お客様には、そこを疎かにしないよう、しっかりと提案を行いましょう。
設備での対策も忘れずに
建物性能を高めることが冬の快適性の基礎となる一方、
日々の暮らしの中でもう一歩の暖かさをつくるのが設備の役割です。
また、設備は導入のハードルが比較的低いことから、
既存住宅へのリフォーム提案としても相性が良いという特長もあります。
設備に関して、最も効果的なのは暖房方式の見直しです。
近年採用が増えているのが、空気汚染が少なく家全体をムラなく暖められる全館空調や、
床下エアコンを活用した暖房計画。特に床下エアコンは初期費用を抑えつつ、
床面の輻射熱を活かすことで体感温度が上がりやすく、冬場の足元の冷えを解消できます。
床暖房も安定した人気があります。電気式、温水式、それぞれメリットがありますが、
共通して言えるのは「体感温度を引き上げる効果が大きい」という点です。
部屋の空気温度が同じでも、足元が温かいだけで満足度は大きく変わります。
LDKだけでなく、脱衣所・洗面所・トイレなど寒さを感じやすい場所に
部分的に採用することで、ヒートショック対策としても有効です。
また、局所的な設備として、断熱性の高い浴槽、
浴室暖房乾燥機なども、冬の快適性を左右します。
暖房を入れるだけでヒートショックリスクが大幅に低減するため、
特に高齢者のいる家庭では強く提案したい設備です。
近年注目されているのが、窓リフォームとしての内窓設置です。
既存の窓はそのまま、室内側に樹脂製サッシの内窓を追加するだけで、
断熱性・気密性が大幅に向上し、コストに対する効果が大変高い方法です。
冷気の侵入や結露に悩む既存住宅への提案としては、導入しやすい対策といえます。
設備による寒さ対策は、建物性能を補完しつつ、
生活の細部で快適性を調整する役割を果たします。
設計・建物性能の話だけで終わらせず、
設備との組み合わせまで踏み込んだ提案ができる住宅会社は、
施主満足度を大きく高められます。