和テイストの取り込み方を考える
和テイストの住宅というのは一定の需要があります。
特に中高年層からはその傾向が顕著で、
一条工務店が行った「自宅のインテリアに関するアンケート2024」によると、
40代・50代の15%近くが和風・和モダンを、60代以上の25%近くが和風・和モダンを
自宅のインテリアテイストとして選んでいるという結果となっています。
また、20代でもジャパンディをインテリアのテイストとして
選んでいる方が一定数いることも分かります。
昨今の平屋ブームは衰えるところを知りませんが、和テイストは平屋とも相性が良いです。
そういったことを加味しても、今後も一定数の人気を得続けると
考えられる和のエッセンスを取り入れた住宅。
今回の配信では、和テイストをいかに今の住宅に取り込むかということを考えていきます。
外観、内観、デザイン面の事例
まず、デザイン面でいかに和テイストを取り入れるかを考えていきます。
ハウスメーカーの中でも、和風住宅に強い1社が住友林業です。
例えば、同社は「和楽」というコンセプトで提案を行っており、
内観については「点と線」を強調することで、品のある和テイストを実現しています。
具体的には、畳目の交差や格子の接点が描く点。木の木目、柱、長押、畳の縁などの線。
そしてそれらに、床、畳、壁、天井などの面の要素をシンプルなバランス感で組み合わせることで、
深みと美しさを感じる室内空間を生み出しています。
外観については、長い軒や庇の線が安定感のある横への広がりを強調。
これに、格子などの垂直線を組み合わせることで、繊細な和風イメージを表現しています。
工務店の事例も見てみましょう。
奈良県で和モダンの家を中心に手掛ける建築設計事務所である、
やまぐち建築設計室は、和モダン住宅のポイントとして、
木材や石、土などの自然素材の使用を挙げており、素材感を活かした提案を大切にしています。
加えて、エイジングのデザインとして経年変化を楽しむことができることも魅力としています。
また、障子やふすまを使った間仕切り、フラットで広がりのある空間設計など、
純和風の要素をミニマルに再構築し、現代風に落とし込んでいることも同社のポイントです。
和風の家づくりのポイントとして、
どちらの例にも共通している部分が「侘び寂び」を感じさせるようなシンプルさです。
構成要素が多く、そのまま現代の住まいに取り入れると浮いた印象になりがちな昔ながらの和室も、
鴨居や長押などといった要素をそぎ落とし、残ったエッセンスを引き立たせることで、
現代風の洗練された和の印象を与えることができます。
この引き算が、木、石といった各素材を効果的に魅せることにも繋がっていくでしょう。
暮らし方で和を取り入れる
デザインに関することだけでなく「暮らし方」で和を取り入れるということも一つの選択肢です。
例えば、縁側のある暮らしがその1つです。
縁側は外と中の緩衝帯としての役割を果たし、四季を感じる心地よい暮らしを送るという、
日本らしい住まい方をするための一助となります。
また、中間領域となる縁側は、物干し場などといった様々な使い方が想定できるほか、
昨今人気の高いアウトドアスタイルとも相性が良いです。
中庭を設けるというのも良いでしょう、中庭に四季折々の植栽を植えれば、
家の中にいながらも季節を感じることができ、心のリフレッシュにも繋がります。
敷石などを使えば、より「侘び寂び」を感じるような和風の印象に仕上がるでしょう。
季節と寄り添って生活するという点では、
パッシブ設計も日本の心に近いものがあるかもしれません。
夏であれば、心地よく風が抜けるような設計の窓配置を心がける。
また、深い庇やすだれで、
夏季の厳しい日射は遮るという提案はパッシブ的に推奨されているということに加え、
視覚的に日本的な印象を与えることもできます。
そして冬には日差しを取り入れて、暖かい陽だまりの中で過ごす。
パッシブ設計はついつい熱効率などのメリットばかりが伝えられがちですが、
四季に合った心地よい生活を送ることができるという点も1つの魅力と言えます。
そのほか、インテリアや小物で和のテイストを取り入れることも良いでしょう。
夏は風の通り道に風鈴が置けるようにする、
冬はリビングにこたつが置ける、ふすま等を用いて空間同士を柔らかに繋ぐ、
内装は古道具も馴染むような色使いにするなどといった細やかな配慮が、
現代らしい和風住宅を成り立たせるポイントでしょう。
少子高齢化、人生100年時代といった背景により、高齢者が増加する未来が見えている日本。
年配の方に人気が高い、和テイストを取り込んだ住宅というのは
よりニーズが高まっていくかもしれません。
また、和のエッセンスは若者にも人気の北欧テイストとも相性が良いため、
そこの引き出しを強化しておくと、デザイン力の向上にも繋がっていきそうです。
(情報提供:住宅産業研究)