2024年中古住宅市場を振り返る
新築着工減少続くも、中古住宅は流通拡大
新築住宅の着工は減少傾向、中古住宅の流通は増加傾向と、
新築と中古は異なるトレンドを示しています。
新築着工は、最新データである2024年度の住宅着工統計が4月末、発表されました。
今後、発表元である国土交通省から修正が入る可能性がありますが、
この4月末の発表ベースで、着工戸数は全体で81.6万戸、
前年比2.0%のプラスで着地しました。
この4月の4号特例縮小を見据え、3月に着工を増やした住宅会社が多かったと見られ、
3月単体では前年同月比39.2%増と、急増しました。
結果として、3年振りに前年度実績を上回るところまで着工を伸ばしましたが、
それでも人口減少、少子高齢化が続く日本においては、
この25年度以降中長期的に着工が減少していくことはほぼ確実です。
一方で、流通数が増えているのは、中古住宅です。
レインズのデータによると、2024年度の全国の中古住宅成約件数は、
戸建が5.5万件、マンションが7.7万件と、いずれも前年を上回っています。
中期的に見ても、5年前の2019年度の実績と比較すると、
戸建が26%増、マンションが5%増とそれぞれ増えています。
中古マンションは新築マンションの供給減少が続く中で、以前から需要がありました。
成約件数自体は中古戸建の1.4倍ほどの規模があります。
中古戸建については、成約件数の伸びという点では中古マンションを上回っています。
中古であっても、リフォームで理想の住まいを手に入れるユーザーが増えているようです。
とはいえ、中古戸建を扱う上では特有の注意すべき点もあります。
特に、耐震性能や断熱性能は現行の新築基準と比較すると劣る物件が多いでしょう。
今回はその中でも耐震性能にフォーカスしていきます。
耐震診断、耐震補強で安心な暮らし実現
中古住宅需要が増える昨今、住宅会社としては、
安心、安全が担保された物件を顧客に提供していきたいものです。
その中でも特にこだわりたい要素の一つが「耐震性能」です。
中古戸建の購入を検討するエンドユーザーが耐震性能を見定める上で、
目安にしている要素の一つが「建築時期」。
特に新耐震基準以降の建物であれば、
一定水準の耐震性能が担保されていると判断されがちで、
住宅ローン控除制度が適用されるということもあり、購入対象として検討されやすいです。
しかし、ここで注意したいのは、「新耐震基準イコール安全」ではないということです。
国交省の認可団体である日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)によると、
これまで同団体が調査してきた1万件超の新耐震基準の戸建住宅のうち、
85%は耐震補強が必要な物件だったとのことです。
実際に2016年の熊本地震や2024年の能登半島地震といった大地震の際は、
繰り返しの大きな揺れに耐えられず、このような建物が倒壊するケースが散見されました。
耐震性能が担保された中古戸建を確実に提供するためには、
1棟毎に耐震診断を行うことが必須です。
この取り組みを加速させているのが、一般社団法人の日本住宅耐震普及協会です。
同協会は、全国380名の建築士と提携し、
住宅会社からの依頼を受けて建物診断を実施しています。
建物検査の実績は年間8,000件以上に上ります。
診断自体は筋交センサーや目視による検査などで2時間程度をかけて精密に行い、
構造診断ソフトも活用して建物の上部構造評点を算出し、報告書としてまとめています。
この上部構造評点が1.0以上(新築住宅における耐震等級「1」以上)の場合は、
「耐震基準適合証明書」の発行が可能となります。
この証明書があれば旧耐震基準の住宅でも、
住宅ローン控除制度や登録免許税、不動産取得税の軽減措置が受けられます。
上部構造評点が1.0未満だった場合は、耐震補強の実施対象となります。
コストとしては、人工代によってエリア差はありますが、
高くても150~170万円ほどとしています。
耐震補強の工期は早くて3日ほどです。
中古戸建の耐震診断や耐震改修は、ノウハウが求められる取り組みです。
そのため、買取再販などストックビジネスを始める上で、
このようなアウトソースを活用することも手段の一つです。
中古戸建は需要が着実に増えており、市場としても発展途上で、
ビジネスとして挑戦する価値のある分野と言えます。
(情報提供:住宅産業研究)