続く平屋人気 商品が溢れる中での差別化策は?
価格や性能による差別化
平屋の人気は衰える気配を見せません。
コンパクトながら上質な暮らしを望む層や、二拠点生活、終の住処を求める世代など、
平屋を検討する顧客層はますます多様化しています。
一方で、市場には多くの平屋商品が溢れ、
カタログやサイトを見比べても違いが分かりにくいという声も多く聞かれます。
こうした中、他社と差別化するためにはどうするのがよいでしょうか?
まず、ベーシックかつ説得力が高いのが、価格と性能という切り口です。
価格に関しては、平屋は階段や階ごとのトイレ・手洗い場所等が不要になる分、
床面積を抑えることができるため、建築費も抑制しやすい傾向にあります。
土地さえ十分にあれば、コストメリットからの訴求が行いやすいのが平屋だと言えるでしょう。
そのメリットを強調した、ローコスト平屋商品は散見されます。
例えば、愛知県のAVANTIAは坪単価40万円台(税抜)~の
規格平屋商品「RAN」を2025年2月にリリース。
住宅価格・地価が高騰している昨今、
手が届きやすい価格であることの訴求力はより高まってきていると言えます。
このように、規格型で価格を抑えるのも良いですし、
付帯工事なども込みで商品価格を提示する定額制の家づくりも、
コストパフォーマンスを強調するためには良いかもしれません。
次に性能について。2025年4月に新築住宅における断熱等級4が義務化されたこともあり、
断熱等級5の性能は最早当然となってきていると言えます。平屋に限った話ではありませんが、
性能で差別化を図るためには、断熱等級6や7での提案を行っていかなければならないでしょう。
また今年は、GX志向型住宅の補助金が狙えるという点でも
断熱等級6、7を積極的に狙っていくのが良いでしょう。
例えば、パナソニックホームズは「カサート平屋 断熱等級7モデル」という商品を販売しています。
同商品では、優れた断熱性能により、
住まいにおけるヒートショックの原因となる部屋間の温度差をさらに少なくするとともに、
消費エネルギーの低減にも貢献すると訴求しています。
基本的には断熱性能を上げると建築費も上がってしまいますが、
平屋とすることで2階建より建築費を抑えられた分を
断熱性能に回すという提案はアリかもしれません。
断熱性能の訴求においては、長期的な光熱費削減効果や、
省エネ性能の高さを具体的にシミュレーションして提示することができれば、
お客様に納得感を与えられます。
また、最近は光熱費の高騰もあり、太陽光発電や蓄電池をセットにした提案も有効だと考えられます。
平屋は屋根面積が大きくなる傾向にあるため、太陽光発電との相性は優れていると言えます。
“ならでは”の暮らし方を訴求せよ
平屋の魅力は、価格やワンフロアの便利さだけにとどまりません。
ここ数年の平屋人気の背景には、「自分らしい暮らしをデザインしたい」というニーズがあります。
つまり、間取りやデザインを通じて「どんな暮らしができるのか」を具体的に描き、
お客様の共感を得ることが差別化に繋がってきます。
アウトドアリビングや庭とのつながりを重視した提案は
平屋における定番の暮らし方提案となっています。
横の広がりが強調される平屋は、外との繋がりを感じやすいというメリットがあります。
そのことを活かして、リビングとウッドデッキを大開口サッシでつなぎ、
内と外が一体化するような設計や、BBQコンロや屋外用シンクを標準仕様として提案し、
休日には家族や友人と手軽にアウトドアを楽しめるという
ライフスタイルを提案する会社が散見されます。
中庭(パティオ)のある暮らし方というのも見られるようになってきました。
長野県の田尻木材は「平屋住宅工房」という平屋に特化した家づくりを行うブランドを持っており、
中庭のある平屋モデルハウス「Solire(ソリレ)」で他社との差別化を行っています。
周囲の目を気にせず楽しめる中庭スペースは、屋内と屋外をシームレスにつなぎ、
リビングの延長としても活用できると提案しており、
その家ならではの暮らし方を想像させることでワクワク感を与えます。
例えば、ガレージと一体になった平屋でバイクや自転車を整備する、
アトリエを設けた平屋で、創作活動に集中できるようにする等です。
お客様の趣味・嗜好に合わせた提案は特に強い訴求力を発揮すると言えます。
お客様は「家そのもの」ではなく、「その家で送る暮らし」を買っています。
平屋商品が市場に溢れる中、間取りや性能を説明するだけでなく、
自社でしかできないような暮らし方を提案することが求められるでしょう。
(情報提供:住宅産業研究)