住宅もファスト化が進んでいる? その流れにどう対応するか
分譲、規格住宅などを活用する会社が増加
近年、若年層向けの住宅販売において「ファスト化」の流れが鮮明になってきました。
衣食住のあらゆる領域で「スピード感」「コスト感」が重視される時代、住宅も例外ではありません。
その象徴が、分譲住宅や規格住宅の拡大です。
近年は、大手ハウスメーカーも分譲シフトを進めているところがあるほか、
ハウスメーカー、地場の工務店問わず、規格住宅やセミオーダー型の商品が増加しています。
分譲住宅は土地と建物をセットで提供するため、
購入者にとっては手間が少なく、すぐに入居できる点が魅力です。
また規格住宅やセミオーダー型の商品も、外観・間取り・仕様がある程度決められていることで、
打ち合わせの時間を大幅に短縮できるようになっています。
注文住宅と比較すると、ともにコスト面に優れることは言うまでもないでしょう。
一戸建を検討する共働き世帯や子育て世代にとって、
時間やコストの負担を軽くするこうした仕組みは、ニーズに合致していると言えます。
分譲住宅、規格住宅は、買う側だけでなく、住宅会社にとってもメリットがあります。
これらの売り方は、設計や施工の効率化が可能になり、
安定した品質を確保しやすく、価格競争力を高めることができます。
また、建材や設備の大量仕入れによるスケールメリットを活かすことも可能です。
住宅のファスト化が加速している背景には、社会の変化があります。
例えば、ライフスタイルの多様化や、将来の見通しが立てにくい経済環境。
若い世代を中心に「今の生活を安定させたい」、
「必要以上に広い/豪華な必要はなく、身の丈に合った家でいい」という考え方が強まっており、
手軽さや安心感を優先する傾向が見られます。
ただこの流れが「住まいの質を軽視すること」を意味しているわけではない
という点に気を付けなければいけません。
短期間で手に入る、コストを抑えられるといった合理性の重要度が上がっている一方で、
住む人の満足度をどう高めるかは依然として重要です。
分譲や規格住宅であっても、デザインや暮らし方、性能で差別化を行わなければ、
選ばれづらくなってきていることに注意しましょう。
ファスト化が進んでいる中だからこそ自由設計や高品質が輝く?
建売や規格住宅が支持を集める中だからこそ、
自由設計やワンランク上のデザイン・品質といった点で差別化する「逆張り」も有効です。
自由設計の魅力は、自分だけの住まいを形にできる点にあります。
暮らし方や価値観が多様化する今だからこそ、
画一的な間取りや性能では満足できない顧客も少なくありません。
ペットとの生活を想定した動線、趣味を楽しむためのスペース、
将来のライフステージに対応できる柔軟な設計など、
自由設計だからこそ叶う住まいの価値は確実に存在します。
また、自由設計は土地探しから行うケースが多く、お客様によって建築地が異なります。
建築地が異なるということは、冬季はどれくらい冷え込むか、
どの方角から風が吹きやすいか、日当たりはどうか等の地域特性も異なります。
そういった周辺環境に合わせた断熱性能の選択やパッシブ設計の提案は、
規格化が困難な部分と言えるでしょう。
情報が溢れる現代において、エンドユーザーは質の違いに対してより敏感になってきています。
SNSや口コミを通じて、施工事例や住み心地が共有されるようになり、
見た目や価格に加え、長く暮らしてどう感じるかも評価基準になってきています。
そんな時代だからこそ、高品質を貫く姿勢が支持を集めると言えます。
福岡・熊本を拠点とし、東京・神奈川にも進出している省エネ住宅界のトップランナー、
エコワークスがその良い例です。
同社は、Instagramで定期的にライブ配信を実施しています。
その配信には、会社側から特に促すことなく、
オーナーから「エコワークスの家は良い」といった旨のコメントが寄せられ、
家づくりを考えている人の信頼獲得に役立っているようです。
そのようなコメントが自然と発生することは顧客満足度が高いことを物語っており、
高品質な住み心地の良い家を建てていることのメリットの一つと言えます。
もちろん、自由設計や高品質の提案にはコストや時間がかかります。
しかし、それを理由に敬遠する層がいる一方、
「一生に一度の買い物だから妥協したくない」と考える顧客層も確実に存在します。
市場がファスト化するからこそ、その対極にある価値提案は際立ちます。
スピードと手軽さを求める顧客には規格型住宅を、
こだわりや質を重視する顧客には自由設計や高品質住宅を。
それぞれの強みを磨き、的確に提案できる会社こそが、
これからの市場で存在と手軽さを求める顧客には規格型住宅を、
こだわりや質を重視する顧客には自由設計や高品質住宅を。
それぞれの強みを磨き、的確に提案できる会社こそが、
これからの市場で存在感を高めていくでしょう。
(情報提供:住宅産業研究)