新築マンション価格高騰で盛り上がる都心部中古マンション
東京23区は中古も億ションが当たり前?
マンション価格の上昇が続いています。
新築マンションは建設費の上昇によって、
都心部のファミリー向けマンションは億ションが当たり前となっています。
この上昇スピードも速く、値上りの利益を狙って実需以外の投資家が参入するまでに至っています。
新築マンションの価格が上昇する中で、需要が増えているのが中古マンションです。
1億円を超えるような物件でも、都内では一定の需要があります。
この価格帯はかつて富裕層の領域と言えるような物件でしたが、インフレもあり、
東京23区内でマンションの購入を検討するのであれば、
1億円を超える物件も視野に入れなくてはいけなくなっています。
それでも高額な中古マンションの需要は旺盛です。
その要因と考えられるのは、一つが富裕層の増加。
野村総研が隔年で発表しているデータによると、
直近の2023年時点では「超富裕層(純金融資産5億円以上)」は
2年前から31%増の11.8万世帯、
「富裕層(同1億円~5億円未満)」は10%増の153.5万世帯、
「純富裕層(同5,000万円~1億円未満)」は32%増の403.9万世帯とのことです。
「いつのまにか富裕層」という言葉も出ていますが、
保有株や不動産の値上りなども追い風になりました。
中古億ションの買取再販を行っている会社では、
マンション買い替え層が増えているようです。
エンドユーザーの動向ということでは、
住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」においても
中古億ションの問い合わせが増えているようです。
反響数(問い合わせ)の変化ということでは、2019年を「100.0%」としたときに、
直近2024年は1億円台が361.8%、2億円台が308.2%と
それぞれ3倍超、3億円台が5倍、4億円台が8倍にまで増加しています。
この反響数に対して、実際にLIFULL HOME’S のサイトでは
中古億ションの掲載割合が増えています。
東京23区で2015年時点では1.0%でしたが、
2025年には15.0%まで上昇しています。
買取再販業者が都心部シフト打ち出す
この市況の流れを受け、都心部の高額な中古マンションの深耕を
注力ポイントに挙げる買取再販業者が増えています。
イーグランドは去年からこの領域を強化し始め、
2億円超物件を独自に「ハイグレード物件」と定義していますが、
直近2025年3月期のハイグレード物件の売上高は6億円でした。
2027年3月期には30億円を計画しており、進捗は順調とのことです。
また、スター・マイカ・ホールディングスも近年、
都心部の需要掘り起こしに注力しています。
勝どき、月島といったいわゆる湾岸エリアでは、バルク仕入れも敢行しました。
そして、このビジネスが特に進んでいる1社がコスモスイニシアです。
同社の買取再販事業では一昨年より都心部の供給を強化することを打ち出し、
この過程で中古の億ション物件の販売が増えてきています。
中には5億円を超えるような物件も登場しています。
高額物件の本格的な供給がスタートしたのは前期(2025年3月期)から。
同年の販売単価は、前年から1,000万円以上アップして6,391万円でした。
今期(2026年3月期)に入るとさらに拍車が掛かり、
販売単価はこの第1四半期時点で9,084万円まで伸びてきています。
都心部シフトの背景には、同社の新築マンションの顧客のマインド変化がありました。
直近の5年ほどで、新築分譲を検討する来場客の中に、
同時並行で同社のリノベーションマンションも検討する人が増えてきたとのことです。
とりわけ都心部でこの傾向が強く、同社としてもこのユーザー動向を見極めた形です。
コスモスイニシアの現在の主要エリアは、東京と大阪、京都です。
顧客層はエリアによって大きく異なるようです。
東京・京都では日本人かつ実需が中心で、特に東京では共働き世帯が中心です。
「利便性」や、子育て中のファミリーであれば、「教育環境」を重視する顧客が多い中、
価格帯としては1億~2億円台の物件が選ばれやすくなっています。
また、その中でペアローンを組むケースも増えているようです。
一方、大阪ではタワマン上層階に人気が集中しています。
梅田・中之島などのエリアでリバービューの物件は特に反響が良好で、
そして、購入者も比較的インバウンド、特に中華系富裕層が多いようです。
今のところ大阪のタワマンは東京のタワマンより割安感があり、
かつ利回りの高さから投資目的の顧客からの引き合いも出やすくなっています。
距離の関係もあり、「アジア系の海外旅行客から人気」と言われる大阪ですが、
不動産においても類似の潮流があるようです。
(情報提供:住宅産業研究)